10月29日10時29分のサイレンが響く夜――韓国・梨泰院で159人が命を落とした大惨事から3年、真実を追い続ける遺族たち
とりコレ3行まとめ
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2022年10月29日夜、韓国・ソウル市の梨泰院(イテウォン)地区で発生したハロウィン人混み事故で、最終的に159人が死亡した。(※公式発表)
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その3年目の節目に、ソウル市内では10時29分に一斉にサイレンが鳴らされ、追悼と命の重さを振り返る場が設けられた。
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遺族・被害者らは「なぜ防げなかったのか」「誰が責任を取るのか」といった疑問を抱え続け、政府・行政に対して追加調査と説明責任を強く求めている。
3年経った梨泰院(イテウォン)で発生した人混みの事故
ハロウィンの夜、街には笑い声や仮装の人波が広がっていました――しかし、わずかな瞬間で、夜の賑わいは悲劇に変わりました。韓国・ソウル中心部の梨泰院(イテウォン)で発生した人混みの事故。
あれから3年。追悼のサイレンが鳴る中、遺族たちは今なお「なぜ」「誰が」「どうして」と問い続けています。
この記事では、事件の概要から背景、現在も続く遺族の声、そして私たちが見落としてはいけない“安全の教訓”までを整理します。
最後まで読めば、ただのニュースではなく、命を守るための警鐘としての意味も見えてきます。

事件の概要
2022年10月29日夜、コロナ禍による制限緩和後、多くの人々がハロウィンを楽しもうと韓国・ソウル市の梨泰院(イテウォン)地区に集まりました。
調査によれば、10万人規模の人出があった可能性も指摘されています。
この夜、時間が進むにつれ、主要な通りから細い路地に人の流れが集中。その路地が傾斜しており、幅も狭かったため、人の流れが滞り、押され、倒れた人々が重なっていく――典型的な「群衆崩壊(クラウドクラッシュ)」の構図が生まれました。
公式には最終的に 159人が死亡、多数が負傷したと発表されています。
この事故の背景には、以下のような状況が重なっていたとされています。
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制限緩和で夜の街に人出が急増した。
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狭く、傾斜のある路地構造が安全対策には不利だった。
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群衆を管理・誘導する体制が整っていなかった。
このように、事件の本質を押さえるためには「物理的条件」「人の流れ」「行政・警察体制」の三つを理解することが重要です。
事件にかかわる個別キーワード
群衆管理の失敗
この事件を語るうえで欠かせない要素が「群衆管理の失敗」です。
調査報告では、当日の夜に予想される人出に対し、警察・行政が十分な準備・配置を行っていなかったという指摘があります。
例えば、警察は「群衆危険」を重大視せず、主に性犯罪・交通渋滞・迷惑行為への対応を優先していたという内部資料も存在します。PMC+1
物理的に見ても、この路地は幅3~4メートル程度で、しかも傾斜がついていたため、人が倒れて重なった場合に下の人が逃げ場を失いやすい設計でした。ウィキペディア+1
このように、明らかに危険要素があったにも関わらず、必要な対策が講じられていなかった点が「人災」として語られています。
遺族の訴えと追悼の実施
3年目の節目を迎えた2025年10月、ソウル市では10月29日午前10時29分に市内各所でサイレンを1分間鳴らす追悼行事が実施されました。これは「事故が起きた10月29日、22時20分頃の時間を象徴的に」選んだものです。
遺族・被害者関係者はこの機会に集まり、合同追悼式も開催。外国人被害者の家族も参加し、国際的な関心も持たれています。
その一方で遺族からは次のような声も上がっています。
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「犠牲者リストが非公開で、誰がどこで亡くなったかが明らかでない」
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「防止可能だった事故だと専門家が言っているのに、責任を取るべき人は処罰されていない」
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「心理的ケアも物的補償も遅れており、傷は癒えていない」
これらの声は、追悼が形式的で終わらず、今後の改善や説明責任へつながるかどうかの重大な鍵となっています。
政府・行政の対応と改善への課題
政府・行政側も調査や報告を発出し、改善策を打ち出していますが、遺族・専門家からは「改善実感がない」「トップの責任が曖昧だ」という批判があります。
実際、「この事故は防げなかった」と結論付けた警察特別チームの報告書が出されたものの、処分対象となった公務員はごく一部に留まりました。
また、事故後の街の安全対策として「群衆が流れるルートの確保」「通路幅の確保」「多数人が集まるイベントの事前登録制度」などが検討されていますが、実施・定着までには時間がかかるとの声もあります。
このように、制度としての改善が遅れていることが、遺族たちの不信を強める背景となっています。
今なお続く「真相究明」の声
3年が経過してなお、この事件の「なぜ」「誰が」「どう防ぐか」という問いは色あせていません。むしろ、時間が経つほどに深まる“残された疑問”があります。
まず、外国人被害者の遺族。死亡した159人には複数の国籍の方が含まれており、国内だけでなく国際的な視線も向けられています。例えば「子どもが大好きだった韓国に安心して来たのに…」という言葉が残っています。
次に、調査報告。既に「警察・行政が群衆数を予測していたにも関わらず、決定的な対応を怠った」ことが明らかになっています。
さらに、追悼式のサイレンや式典は象徴的な意味を持っています。10時29分という刻時は、事故の日を忘れさせない「記憶の合図」です。が、追悼だけでは終われない。
「説明して欲しい」「責任を取って欲しい」「再発防止を見える形で示して欲しい」という遺族・被害者側の切実な声があります。
例えば、裁判・処分の進捗も焦点です。2024年には一部の警察官が刑事責任を問われ有罪となったという報道もありますが、行政トップや政治家レベルの責任は明確になっておらず、遺族たちの納得には至っていません。
このような「結果」と「責任」のギャップが、今もなお現場に残る痛みと結びついています。私たち読者・社会としても、ただ「過ぎた出来事」として終わらせてはいけません。
追悼と同時に、教訓を未来につなげる姿勢が求められています。
被害者と街の今
この事故で亡くなった方々の多くは20~30代の若者で、地元の韓国人だけでなく留学生・旅行者といった外国人も含まれていました。
被害を受けた街・梨泰院(イテウォン)も、夜の街・観光地としてのイメージに大きな影を落としました。
事故後、顧客の減少・営業自粛の報道があり、ハロウィーンを含む夜のイベント自体が見直される動きも出ました。
さらに、心理的ケアの問題も顕在化しています。被害者・救助者・遺族含めて「トラウマ(PTSD)」の継続が明らかになっており、2025年の研究では「事故から1年を経過しても、不安・抑うつ・PTSDのスコアが有意に低下していない」という結果も出ています。
こうした“見えない被害”が、復興・改善をより複雑にしています。
まとめ
2022年10月29日に起きた梨泰院(イテウォン)の事故は、単なる“事故”ではなく、群衆を管理できなかった“防げた人災”の側面を多く含んでいます。159人という命が奪われたその夜は、社会にとって大きな教訓です。
今、その3年目の節目で私たちは改めて考え直す必要があります。
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なぜこのような構造的な問題が見過ごされたのか。
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誰が責任を持つべきなのか。
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同じような夜の集まりをどう安全に保つか。
追悼のサイレンが響いた今こそ、記憶と教訓を未来につなげる時です。私たちも「被害を忘れない」「説明を求め続ける」「安全を当たり前にする」社会の一員として関心を持ち続けましょう。
参考・引用記事
Only 9 civil servants disciplined for 2022 Itaewon crush – The Korea Herald https://www.koreaherald.com/article/10604078
An AcciMap analysis of 2022 Itaewon crowd crush in South Korea – C Son ScienceDirect (2025) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S092575352400331X
A Crowd Disaster Study: The Itaewon Seoul Crush – PMC (2024) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11456318/
A visual guide to how the Seoul Halloween crowd crush unfolded – The Guardian (2022) https://www.theguardian.com/world/2022/oct/31/how-did-the-seoul-itaewon-halloween-crowd-crush-happen-unfolded-a-visual-guide
Changes in citizens’ anxiety, depression, and PTSD after… – Nature (2025) https://www.nature.com/articles/s41598-025-15634-0










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