【5月の食材】旬を迎えるさくらんぼ|日本での歴史と生産の舞台裏
5月はさくらんぼが旬を迎える時期です。
甘酸っぱい味わいと宝石のように美しい見た目で、多くの人に親しまれている果物ですが、日本での生産が本格化したのは明治時代以降のことです。
本記事では、さくらんぼが日本に伝わった経緯や、日本国内での生産方法、収穫の仕組みについて詳しく解説します。
旬の果実の背景を知ることで、より一層さくらんぼを楽しめるようになりますよ。
1. さくらんぼの歴史:日本に広まった経緯
さくらんぼは日本原産の果物ではなく、海外から持ち込まれた品種が広まったものです。日本で栽培されるようになったのは、明治時代以降のことでした。
◇ さくらんぼの起源
さくらんぼの原産地はヨーロッパから西アジアにかけての地域で、古代ギリシャやローマ時代からすでに食べられていました。
特にヨーロッパでは、果実としての価値だけでなく、装飾や薬用としての利用もあったといわれています。
現在、さくらんぼには主に以下の2つの系統があります。
- スイートチェリー(セイヨウミザクラ):甘みが強く、日本で流通している品種の多くがこの系統
- サワーチェリー(スミミザクラ):酸味が強く、ジャムや加工用に適している
◇ 日本への導入
日本にさくらんぼが持ち込まれたのは明治元年(1868年)で、北海道開拓を進めていたドイツ人ガルトネル氏が導入したとされています。
その後、明治8年(1875年)に山形県に持ち込まれ、果樹試験場で本格的な栽培が始まりました。
山形県の本多成充氏が栽培試験を行い、さくらんぼが日本の気候に適していることを発見。その後、試行錯誤を重ねながら、日本向けの品種改良が進められていきました。
◇ 山形県が日本一の産地へ
山形県は、寒暖差が大きく、水はけのよい土壌があることから、さくらんぼの栽培に適していました。
これが成功し、日本一の生産地となったのです。現在では、日本のさくらんぼ生産量の約70%を山形県が占めています。
2. さくらんぼの主な品種と生産地
日本で生産されているさくらんぼは、品種によって味や食感が異なります。また、生産地によって栽培の特徴も変わります。
◇ 代表的な生産地
- 山形県(全国生産量の約70%)
- さくらんぼの聖地とも呼ばれ、日本の主要な産地
- 「佐藤錦」や「紅秀峰」といった人気品種が多く生産されている - 北海道
- 比較的冷涼な気候を活かし、甘みの強いさくらんぼを生産 - 青森県・秋田県
- 近年、気候変動の影響でさくらんぼの生産が増加している
◇ 日本で人気のさくらんぼ品種
- 佐藤錦(さとうにしき)
- 日本を代表する品種で、甘みと酸味のバランスが良い
- 山形県の佐藤栄助氏が1912年に「ナポレオン」と「黄玉」を交配して誕生 - 紅秀峰(べにしゅうほう)
- 佐藤錦よりも大粒で、糖度が高く濃厚な味わい
- 収穫時期が遅く、日持ちが良い - ナポレオン
- 果肉がしっかりしていて、加工用にも適している
- 佐藤錦の親品種としても知られる
3. さくらんぼの生産と収穫の仕組み
美しい赤い果実を育てるには、細やかな栽培管理が必要です。さくらんぼはデリケートな果実で、気象条件や管理の影響を大きく受けます。
◇ さくらんぼ栽培の流れ
- 受粉作業(4月〜5月)
- さくらんぼは自家受粉しにくいため、ミツバチを活用して受粉を助ける - 摘果(5月中旬〜6月初旬)
- 甘みの強い果実を育てるために、不要な実を間引く - 袋かけ(6月)
- 雨や害虫被害から果実を守るため、ひとつずつ袋をかける
◇ 収穫の方法
- 手作業で一粒ずつ丁寧に収穫(傷つきやすいため)
- 収穫時期:6月中旬〜7月上旬(品種により異なる)
- 早朝に収穫し、鮮度を維持する
4. さくらんぼが高級フルーツとされる理由
さくらんぼは他の果物と比べて価格が高いことでも知られています。これは、栽培や収穫に手間がかかるためです。
◇ 高価格の理由
- 天候の影響を受けやすい - 雨に当たると実が割れてしまうため、栽培管理が難しい
- 人の手による収穫が必要 - 一粒ずつ丁寧に手摘みするため、人件費がかかる
- 日持ちが短い - 冷蔵しても鮮度を保つのが難しく、流通コストが高くなる
【まとめ】5月の旬の味覚・さくらんぼを楽しもう
さくらんぼは明治時代に日本に持ち込まれ、山形県を中心に生産が広がりました。
栽培や収穫には細やかな管理が必要であるため、高級フルーツとして扱われています。
5月から6月にかけては、さくらんぼ狩りを楽しめる観光農園もあります。
ぜひ、この機会に旬のさくらんぼを味わってみてはいかがでしょうか?
最近のコメント