【6月の食材】6月に旬を迎える杏の歴史と産地
6月に旬を迎える果実「あんず」
6月は初夏の訪れを感じさせる季節。みずみずしい夏の果物が出回り始めるなかで、ひときわ短い旬をもつのが「あんず(杏)」です。
見た目は小ぶりな桃に似ており、酸味と甘味が調和した風味が特徴。
スーパーなどではあまり見かけないため、「あんずって日本で採れるの?」と疑問に思う方も少なくありません。
実は杏は、主に長野県など限られた地域で栽培されており、収穫期も6月下旬から7月初旬までと非常に短いため、生のまま味わえる機会は貴重です。
この記事では、杏の歴史や栽培地、加工方法、郷土料理まで詳しく解説しますので、ぜひ参考にして旬の味覚を楽しんでください。
杏の収穫時期と特徴
杏の旬は、主に6月中旬から7月初旬までのごく限られた期間です。
なかでも、長野県千曲市は日本屈指のあんずの産地として知られ、毎年この時期になると杏を求めて多くの人が訪れます。
杏の果実は完熟すると、オレンジ色に輝き、やわらかくジューシーな食感になります。
ただし、杏はとてもデリケートな果物で、収穫後すぐに傷みやすいため、生食できるのは地元など限られた場所のみです。
そのため、収穫された杏の多くはジャムや干し杏、あんず酒などに加工され、保存食として年間を通じて楽しまれています。
杏には以下のような特徴があります。
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ビタミンAやカリウムが豊富で、美容や健康にも良い
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香りがよく、酸味と甘味のバランスが絶妙
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完熟前は酸味が強いため、加工に向いている
まさに初夏にぴったりの自然の恵みです。
杏の歴史と伝来
杏は、もともと中国が原産の果実で、約2000年以上の栽培の歴史をもちます。
日本には奈良時代以前に渡来したとされており、当初は薬用植物として用いられていました。
とくに種の中の仁(じん)は「杏仁(きょうにん)」と呼ばれ、漢方薬として利用されてきました。咳止めや消化促進に効くとされ、現在でも杏仁豆腐の香り付けなどに使われています。
食用の果実としての利用が広まったのは江戸時代以降です。
当時はまだ生食が一般的ではなく、保存性の高い干し杏や砂糖漬け、塩漬けなどが中心でした。
その後、明治時代になると果樹としての栽培技術が進み、主に長野県を中心に本格的なあんず農園が広がっていきました。
このように杏は、薬用から食用へとその役割を変えながら、日本の暮らしにゆっくりと根付いてきた果物なのです。
■6月 食材 杏の主な栽培地とその特徴
杏は日本全国で広く栽培されている果実ではありません。
生産量の約70%以上が長野県に集中しており、特に千曲市(ちくまし)は「杏の里」として知られています。
そのほかにも、寒冷地である青森県や秋田県の一部で、家庭用や小規模栽培が行われています。
●長野県 千曲市(旧更埴市)
千曲市は日本で最も多くの杏を生産している地域で、毎年6月下旬には「あんずまつり」や直売会が開かれます。
栽培されている品種は「信州大実」「平和」「新潟大実」などが中心で、用途に応じて品種を使い分けています。
甘みと酸味のバランスが良い「信州大実」はジャムや干し杏に最適とされています。
●青森県 弘前市
青森県弘前市では、果樹栽培の文化が根強く、りんごだけでなく杏も栽培されています。
生産量は多くありませんが、地域ブランドとして一部出荷されています。寒冷な気候で育った杏は、果肉が締まり加工に向いています。
●秋田県 横手市周辺
秋田県では商業栽培こそ限られていますが、昔ながらの農家では家庭用に杏の木を植えていることもあり、干し杏やあんず酒などに加工されています。
地域色のある手作りの保存食として親しまれています。
■6月 食材 杏を使った料理と加工品(修正済・正確版)
杏はそのまま食べても美味しいですが、収穫後すぐに傷みやすいため、昔から加工して保存する文化が根付いています。
特に長野県では、杏を使った特産品や郷土料理が豊富に存在します。
●杏ジャム(あんずジャム)
完熟杏を砂糖で煮詰めて作る「杏ジャム」は、千曲市などのあんず農家でも盛んに作られています。
甘さと酸味のバランスが絶妙で、パンやヨーグルト、アイスにぴったりです。添加物を使わない自然派のジャムも多く、贈答品にも人気です。
●干し杏(ドライあんず)
杏を天日や機械で乾燥させた干し杏は、保存性が高く、栄養価も豊富。
食物繊維やビタミンA、鉄分を含んでおり、美容や貧血予防にも役立ちます。甘味料を使わずに自然のまま干したものは、素朴で優しい味が楽しめます。
●あんず酒(果実酒)
ホワイトリカーに杏と氷砂糖を漬けて作る「あんず酒」は、家庭で手軽に仕込める果実酒です。
ほんのりした甘酸っぱさとフルーティーな香りが特徴で、ロック、水割り、ソーダ割りで楽しむのが一般的です。女性に人気があり、お酒が苦手な方にも飲みやすい味わいです。
●あんずおこわ(郷土料理)
千曲市周辺では、甘く煮たあんずともち米を一緒に炊き込んだ「あんずおこわ」が郷土料理として知られています。
杏の甘酸っぱさがもち米に染み込んで、素朴ながら奥深い味わいになります。お祭りや家庭のハレの日など、特別な場で振る舞われる一品です。
●しそまき杏
種を抜いた杏を赤紫蘇で巻き漬け込んだ「しそまきあんず」です。
甘く酸味のある味わいはお茶請けとして密かに人気です。
■まとめ:旬の杏は6月だけの特別な味覚
杏は日本で収穫される果物の中でも、特に「旬が短い果実」です。
中国から伝来し、薬用として用いられた歴史を経て、今では長野県を中心に、初夏の風物詩として親しまれています。
とくに千曲市では、地域の人々によって代々守られてきた栽培と加工の文化が息づいています。
生の杏が味わえるのは6月のわずかな期間だけ。市場で見かけた際は、ぜひ手に取ってみてください。
ジャムやあんず酒として長く楽しむのもおすすめです。この時期ならではの味を、ぜひご家族や友人と楽しんでみてはいかがでしょうか。
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